指の付け根の関節(MP関節)をバネとして使う
ピアノを弾くとき,指の付け根の関節(MP関節)を曲げたり伸ばしたり,意識的に動かして使うことが多いと思います.指が動かないと悩むときも,この関節が問題と感じることが多いのではないでしょうか.
このMP関節ですが,まったく力を入れていない状態でも,バネのように元の状態に戻る性質があります. この性質は,手を何も力を入れていない状態にして,もう片方の手で,指を上下どちらかに曲げて離してみると良く分かります.
それで,手首や腕の動きをMP関節のバネ的な性質で鍵盤へ伝えることで,ほぼMP関節を意識的に動かさなくても弾くことができます. バネの強さは,指の真ん中の関節の曲げ具合で調節します. 慣れてくると,とても楽に演奏ができますし,MP関節がショックアブソーバー的な役割をしてくれるので,指や手への負担も少ないのではと思います.
一応,動画をとってみましたが,映像だと分かりにくいですね... (^^;
手の重さを使って弾く練習 【動画編】
以前書いた,手首から先の重さを使って弾く練習を動画で録ってみました.
あまり大きな音は出ないですし地味な練習ですが,ピアノを楽に弾くためにはとても大事だと考えます. また,手の重さを指で支えつつ鍵盤に伝えることになりますが,一つ前の記事で書いた,指を伸ばす動きを使うか,指を曲げる動きを使うかを考慮して練習すると良いと思います.
指の使い方と音色
手や腕の重さは指先を通して鍵盤に伝えられる訳ですが,指の曲げる動きで鍵盤を下げるか,指を伸ばす動きで鍵盤を下げるかで音色が変わってきます.これはアクション内のレピテーションレバーがスクリューに当たる音が変化することが原因です.
試しに録音をしてみたのですが,前半が指を伸ばす動きで後半が指を曲げる動きで弾いたものです.
指を伸ばす動きは場合は音の立ち上がりがクリアに聞こえ,反対に指を曲げる動きの場合は少しぼやけた感じで聞こえます.ここから先は好みになりますが,私は指を伸ばす動きを使うのが好みで,小さな音もよく遠くまで届き,弾く力も少なくて済むように思います.
一般的には指を曲げる動きでピアノを弾く方が多いと思うのですが,指を伸ばす動きも効果的に使えることを知っておくと音色を変えたいときに便利だと思います.
手首を使ってレガートを表現する
手首から先の重さだけで弾く練習に慣れてきたら,次は手首をつかってレガートを弾く練習をします. レガートは単に音を繋げるというよりは,複数の音の並びをひとまとまりに聞こえるように演奏するのが重要なポイントですが,これを指の加減だけで行うとなかなか難しいものです. そこで手首から先の重さで弾きつつ,手首を鍵盤側に曲げる運動を組み合わせることでレガートを表現してみます.
基本として3つの手首を曲げる速さのバリエーションを練習します.
- 最初遅く始め,中間が一番速く,最後遅くする
- 最初速く始め,徐々に遅くする (デクレッシェンド)
- 最初遅く始め,最後速くする (クレッシェンド)
一番速く手首を曲げるポイントをコントロールすることで,レガートやフレーズの重心を表現できるので,とても便利です.また,手首だけではなく,肘,肩,鎖骨,股関節なども参加させることで,ダイナミックな表現が可能になってきます.
手の重さを使って弾く練習
ピアノを楽に弾くために最初にした「手の重さを使って弾く練習」.
- 手首の力を全部抜いて手首から先をダラっとさせた状態で,何か単音を弾きます.
- 手の重さが1つの指にかかり,それによって鍵盤が下がっている状態を確認します.
- 次の音を弾くときには,今弾いている鍵盤を上げる動作によって,次の鍵盤を弾く指に手の重みを移します.音の大きさは鍵盤を上げる速さによって変えることができます.早く上げれば上げるほど,より大きな音になります.
この練習では,指先でレピテーションレバーがレットオフを決めるスクリューに当たる瞬間を感じることが重要です.慣れてくるとコツっと当たるのが分かります.当たった後,それまでの運動エネルギーによって鍵盤がさらに下がりますが,その後バネによってコツっと当たった部分まで押し戻されます.
スクリューにレピテーションレバーが当たった時点で,ジャックがローラーを突き上げハンマーがアクションから離れ弦を叩くということと,手首から先の重みだけで鍵盤が下がっている状態を十分にキープできるということを,理解することが肝要です.たまに鍵盤の底をしっかりたたきなさいという話を聞きますが,ピアノのアクションの構造を考えれば,無用な雑音を生むし,疲れるだけですね (>_<)